• だしと私 2025.04.09

Yol.56 YARN HOME代表 荒川祐美さん

一人暮らし歴は約20年。自分の暮らしを自分らしく彩ることを楽しんでいる荒川祐美さん。好きな家具やファブリックで居心地のいい空間をつくり、季節の花を飾り、食べたいものを料理し、好みの器に盛って食べる。
「さみしさよりも楽しさのほうが勝りますね。友達と遊んだり外食したりするのも好きですが、家で気ままに食べたいものを作って食べるのも大好きなんです」
自宅兼仕事場でもあるため、自炊の機会も多いよう。

「よく作るのは、油素麺とか混ぜご飯かな。凝った料理より、ささっとできる一人ごはんが多いです。出張先などで道の駅に寄って食材を買うのは楽しみの一つ。私が子どもの頃から馴染んできたのは鰹節といりこですが、地方によってだしが違うのも興味深くて、いろいろ買っています」

お気に入りは、やいづ善八のやきつべのだしとだしプレッソ。
「お味噌汁を毎日作るので、だしパックは常備しています。やきつべのだしを初めて使ったときは、ほかの簡易だしよりも味がやさしいなと感じました。野菜の風味が際立つのがいいなって。だしプレッソは素麺のつゆによく使います。みりんと醤油で割るだけで作れるし、冷蔵庫に入れておけば冷やす必要がないのもうれしい」

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荒川さんがよく作る油素麺は、料理教室で習ったレシピをもとに自己流にアレンジしたもの。固めにゆでた素麺に、希釈した深み鰹白だしとごま油、醤油を混ぜて乳化させたタレを合わせ、手でよく和えてから器に盛ります。そこに、唐辛子と刻んだ長ねぎをごま油に入れて熱し、ジュッとかければ完成。手でしっかり混ぜるのがコツだとか。

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毎年、枝豆の時期によく作るという混ぜご飯も教えていただきました。
ゆでてさやから出した枝豆、カリッと焼いた油揚げ、刻んだ茗荷と炊き立てのご飯に混ぜ、塩で調味。ごまとさくさく鰹ふりかけを振って仕上げます。
「ゆかりを混ぜてもおいしいんです」

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最近よく作るのは、深み鰹白だしを使ったパスタ。写真は地元のスパゲッティ屋さんで食べるアサリのパスタをイメージして作ったもの。フライパンにアサリを入れて火にかけ、白ワインと深み鰹白だしを加えて蒸し煮にし、たらこと刻んだ青じそを加えて混ぜるだけ。

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「先日は深み鰹白だしで、鯛だし茶漬けを作りました。鯛のお刺身を薄口醤油とみりんに15分くらい漬けておき、炊き立てのご飯にのせて、青じそや海苔、ごま、わさびなどを添えて、冷水で割った白だしをかけるだけ。すごくおいしかった!」

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荒川さんは、YARN HOMEというファブリックブランドの代表。やいづ善八との出会いも、合同展示会への出展でした。
「家業が広島の寝具メーカーなんですが、イギリスに留学していたとき、ベッドルームの重要さや、居心地のいい空間にはインテリアリネンが欠かせないということに気づいたんですよね。それをきっかけに、日本のものづくりを大切にしたインテリアファブリックのブランドを始めました」
タオルやハンカチ、布巾、ベッドリネン、ルームシューズといった商品は、どれも肌触りがよく、シンプルで機能的なデザインが大人気。それを支えるのは、日本で真摯にものづくりに励む生産者たちとの協業です。

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「例えば、メインに使っているpasima(パシーマ)®︎という素材は、家業で長年、扱ってきた馴染みがある素材です。もとは医療用の脱脂綿やガーゼを作っている会社がアレルギー症状がある方も使えるものをと作られたもの。肌にやさしい高密度のガーゼと綿のキルティング素材を使用していて、抗菌剤や柔軟剤などは不使用。私は色やキルティングを独自のデザインにアレンジして、商品化しています」
針目が細かいので頻繁に洗濯しても中綿が乱れることもなく、ホコリが出にくいため、一度使うとリピーターになる人が多いとか。自然からインスピレーションを得た特徴的な色も、魅力のひとつ。
「定番の4色は、空や雲の色をイメージしています。限定色は植物や食べ物の色から。縁取りの色をポップにしたり、サンプル作りで余った糸や生地も製品化したり。自分のアイデアを形にしていく仕事はとても楽しいですね」

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YARN HOMEの製品が気持ちいい、という感覚は、おいしいものを食べたい、心地よく暮らしたいという感覚とつながっていると考えた荒川さん。さまざまな方向からライフスタイルそのものを伝える場所をつくりたいと、昨年末、広島にショールームをオープンしました。
「直販店はないんですか?と聞かれることが多いんですが、初めての場所がこちらです。ただ、商品を売るためだけではなく、衣食住を感じてもらいたいと思い、古い一軒家をリノベしてショールームとしました。今後は不定期でギャラリーとしても運営していく予定。ゲストを招いての食事会や料理教室、ワークショップなど、体験できる機会を増やしていきたいなと思っています」

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東京と広島との2拠点で活動し続ける荒川さん。ショールームの準備期間は忙しすぎて、心身ともに弱ってしまったことも。
「人に頼るのが苦手な性格もあって、一人で抱えてしまいがち。本当にできあがるかな、来ていただいた方に満足してもらえるかな、などと考え始めると不安でたまりませんでした。今はようやくオープンできて、みなさまに喜んでもらえて、ほっとしているところです」
4月にはアクセサリーブランドのBYOKAの展示会、5月には料理家の城田文子さんのヨガと料理のイベントを企画中。詳細はインスタグラムの @away_hiroshimaをご覧ください。
「目の前には厳島があり、海も空も山もある自然豊かな場所です。ぜひゆっくりして行っていただきたいです」

取材・文/藤井志織

プロフィール


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荒川祐美
1983年生まれ、広島県廿日市出身。寝具メーカーを営む家で、ものづくりを間近に見て育つ。ファッションデザインを学ぶために上京。アパレル会社勤務、イギリス留学を経て、2016年にブランド「YARN HOME」を立ち上げる。高品質で長く使い続けられる製品づくりに取り組んでいる。